・・・・なのに


次の日には、これがわたしを甚振る新たな材料になっていた

あんなに真剣にわたしを心配してくれた坂野のことも窮地にたたせることになってしまったことに、後悔の念はやまなかった


わたしと坂野が理科準備室で密会しているだの、坂野を誘惑した手口がどうのと、あることないこと面白おかしく学校中に知れ渡った


あんなに人望の厚かった坂野も、生徒たちの好奇の目に触れ、あまり笑顔を見せなくなった

毎日ピリピリと張り詰め、生徒を信じられなくなっているのがわかるようだった


だけど、坂野は密かにわたしに言った



「ここで辞めたらダメだぞ。俺も頑張るから、李生、お前も頑張れ」



辛い毎日の一筋の光

坂野がいるから、頑張れる

わたしは次第に坂野に惹かれるようになった

坂野の薬指に指輪があることは知っていたが、心の中で想うぐらいはいいだろうと胸に秘めていた