#5


高校生活が楽しかったのは、1年の時までだった

丁度クラス替えがあった2年からは、友達との折り合いが合わず、特定の女子生徒から嫌がらせをされるようになった

共学とは言え、女子が7割を占める学校で、女子生徒同士のいざこざは日常茶飯事だった

だが、当事者ともなれば、その苦痛は並大抵なものではなかった


学校という小さな世界がすべてだったあの頃、わたしは絶望の淵に立たされていた



「先生・・・・、わたし、学校、辞めたい、です」


先に出ようとする涙を押し殺して、詰まる言葉をやっと紡ぎ担任の坂野に言った



坂野は30代半ばで、全国でも強豪の剣道部の顧問であり、当時の教師陣の中では容姿端麗な教師だった


それでいて生徒の人望も厚く、坂野を悪く言う生徒を聞いたことがなかった



坂野はもちろん、突然の告白に驚いていた


「どうした、李生。なんかあったのか?」



なにもなければこんな風に思わない

もうなにもかもうんざりで、死ぬのも悔しいし、勇気もない

ただ、ここから逃げ出したいだけ

こんな惨めな学校生活から抜け出したいだけ