李生は自分の動悸が激しくなっていくのを感じた

胸が苦しい

助けて・・・・匠

思い出したくない記憶を、自分ではどうしようもない速さで頭が辿ろうとしている

・・・苦しいよ、匠



李生は先に行く匠に追いつこうとした

だけど、苦しくて、その背中に寄りかかりたいのに

なかなか手が届かない


匠、お願いだから、わたしの過去など探ろうとしないで



・・・待って、待って、待って、匠


・・・・、、、、、、


かろうじて指先が匠の背中を捉えたその瞬間



「・・・・ねぇ、」


「え・・・・」



秋の夕暮

人目を避けようと通った公園の散歩道




なのに





初めてその後ろ姿に、李生は思い切り抱きついた






それは匠の匂いだったが

確かに匠のからだだったが

李生にとって

あの頃の記憶を辿り

その記憶を忘れさせてくれる存在は

今、匠のほかにいなかった



匠・・・・助けて、もうなにも言わないで


ただ、こうしてそばに居て




匠のからだをきつく抱き寄せて

悪夢から逃れようとするほど

わたしのあの頃の記憶が蘇る‐‐‐‐‐‐・・・・・・・・