「だってさ、もし李生と同い年だったら、一緒に高校行ったり、普通に恋人同士みたいに出来るんだよね?

この間、俺が知らない李生を柚くんが知っているって思っただけで、なんかすんごい悔しいし、ムカついた。

俺だって、李生の高校生だった頃知りたいよ」


匠は李生の手をポケットに入れることができなくて、悔しそうに自分の両手をポケットに突っ込んだ


「わたしの高校時代・・・・?」


そんなこと知ってなにになるっていうの


「そう、李生はどんな高校生だった?」


「う~ん・・・・どうかな。・・・きっとなにも考えてなかったよ」


・・・・なにも


李生の表情が硬ったのを、匠は気づかない



「そうじゃなくてさ~、柚くんが言う可愛かった李生の顔も見たいし、李生の彼氏とかも見たいし・・、あれ、それは見たくないかな・・・てか、俺がなるし・・・」


ぶつぶつと匠は言いながらまた先を行く

匠のブレザーを着ていても華奢な後ろ姿に、あの頃の柚希が重なる

匠の歩く姿が、声が、空気が、香りが、当時の彼に思えてくる


思い出したくないの

あの頃の自分なんて

思い出したくないの

あの頃のことなんて