チュッと小鳥が啄むように、匠は李生の唇に触れた


それから額と鼻の先だけをつけて、間近で瞳を覗いてくる


「李生は俺のこと、好き?」


匠の瞳と息が不安に揺れているのが手に取るようにわかる

きっとここで”好き”とはっきり言えば、匠の衝動は抑えられないだろう

匠の李生の肩を持つ手に力が入る


”好きって言ってよ”、そう言っている


だけどわたしはけして”好き”という言葉を口にしない


「嫌いって言ってもいい?」

なんて意地悪

「やだ」

そう答えるのがわかっているから


「だったらそんなこと聞いちゃダメ」


だって、あなたはあの頃のあの人にそっくりなだけの少年

時々、私の中で跳ねるカエルやビーンズも本物のあの人を前にしたら失神するわ


だって、忘れられないの

この胸の不発弾を取り除いてくれる人が現れるまでは


それは匠、あなたじゃない