彼の口元がまるでスローモーションのように見えた




「・・・・・もしかして、片田?」




その言葉に

その声に

その唇に


わたしのからだは震え凍りついた



「ゆ・・・・ゆずき、くん?」


喉から絞り出した声は

上ずり掠れ、みっともない音を奏でた



この名前を彼ではなく、自分自身に問いかけて


”夢よ醒めて”と願うのに



胸の鼓動は嫌々をするように

激しく胸の上皮を突き上げる


ああ、なんて”現実”なの