「いいんだよ、俺に話して瑠璃の気持ちが晴れるならどんなことでも」
「・・・聖。
・・・・あのね、匠も聖みたいに前はとっても優しかったんだよ?でも、この頃の匠はなんか変。
なにに対してもやる気ないし、・・・強引だし、、、今日だって、急に帰れって」
瑠璃は爪を噛みだした
彼女が爪を噛みだすのは、自分の思うようにいかなかった時だ
聖は心の中で深いため息をついてから、瑠璃の口元から手をそっと外してやった
「ほら、またここだけネイルが剥げてるよ。瑠璃はこんなに綺麗にネイルもしているし、華奢な指も魅力的なのにそれを自分で壊しちゃいけないな」
聖はそっと手を撫でてあげた
瑠璃自身、そうしてもらうことで安心するところがあった
一人っ子で育って、親の愛も金もすべて独り占めしてきたのに、彼女は貪欲に愛を求める性格であった
どんなに親が愛を注いでも、それ以上のものを常に求めた
以前は親への不満が大半を占めていた瑠璃の愚痴は、匠という同級生を好きになってから移行した
俺にしたらどちらでもいいが、いつもどのタイミングでしかけようか見計らっている
俺を信用しきっている瑠璃、そしてその父親
瑠璃には何の恨みもないが、父親の汚い金を何の疑いもなく使っていることに腹が立つ
その汚い金をつくり出すあの父親は絶対に許さない
いつか、そう遠くない未来、俺は美羽が受けた苦しみ以上のものを瑠璃に与える
そして父親には、愛する者が人間として絶望し、やがて消滅する悲しみを与えてやる
俺は絶対に許さない
美羽の未来を奪ったこと、命を奪ったことを
だから瑠璃
今は俺を
無償の愛をくれる
優しい”お兄ちゃん”だと思ってて、いいんだよ