#20


煌めく夜景を、瑠璃は時々溜息を吐きながら、頬杖をついて観ている

ホテルの展望レストランの一角

向かい合わせに座っている聖は、そんな瑠璃に構わずに高級赤ワインを堪能している

代金はもちろん、目の前の瑠璃が全部払う、当然だ

俺は今、同伴という子供のおもりをさせられているのだから



この社長のひとり娘瑠璃は、父親の経営しているclub passionne'met(クラブ パスィオネマン)のNO2である俺をいたく気に入っている

俺は同伴に不自由はしていないのに、瑠璃は自分が独り占めしたいがために親の金で誘ってくる

娘に甘い社長には、”娘の話し相手になってほしい”と頼まれている

自分が娘と上手くいってないものだから、娘は何を話したか、今はどんなことに興味があるのか、後から根掘り葉掘り聞いてくる

俺は社長からもいたく気に入られている様子だ、いや、上手く利用されているっていうところだろうか

俺自身は社長にも、この娘にも利用されているつもりはないのだが、まあ今は良しとしておこう



「・・・ねぇ、聖。あたしって、匠にとってなんなのかなぁ」


夜景を観る体勢を崩さずに、瑠璃は話し出した

匠とは、瑠璃が好きな相手で、かなり酷いやり方で奪おうとした同級生のことである

子供の恋愛に全く興味はないが、俺自身に熱を上げられるよりマシだ


「・・・キス、はね、・・・したんだ。好きっても言ってもらえた。でも・・・、やっぱり匠はあのオバサンのことが忘れられないみたいで、時々怖いって思うの。あのオバサンのことになると、途端に、、、」



「へぇ、キスなんていつの間にそんなに進展したの。瑠璃がんばったんだね、エライ、エライ」


聖は少し笑みを見せて、小さな子供を褒めるように言った