#19


「もしもし、東吾先輩?」


「・・・ああ、どうした」


東吾は、研究室のソファでつかの間の仮眠をとっていたために、少し不機嫌な声で電話に出た


「ぁ、すみません、もしかして寝てました?」


「・・・ん、まあ、ここんとこ詰めてたから・・・で?」


いかにも早めに用事を済ませたいと言わんばかりに、自分から話を切り変えた


「・・・すみません、、、実は俺、先輩に聞いた後すぐにカフェに行ったんです。

・・・でも、李生さんは居ませんでした」


匠はあえて母親のことを言わなかった

もしかして、母親の仕業かもしれないなどと言ったら、いらないことまで東吾に愚痴を聞かせてしまいそうだった


「え、マジで?そんなはずねぇし・・・つか、、、あ」


チッ、あいつ・・・


東吾の脳裏に政宗の顔が浮かんだ



「どうしたんですか?」


「ぁ、いやほら、無駄にキレーな男いたろ?たぶん、あいつにやられた」



「え・・・」


確かに、母親とあの政宗という男は怪しかった
あいつが協力しなきゃ、李生をどうこう出来なかったはずだ
きっと母親に頼み込まれたに違いない

益々、母親に対する嫌悪感が増した気がした