「匠!!」


咲子はそう叫びながら、政宗の腕をすり抜けたが、すぐによろけて床に膝まづいた

政宗はすかさず咲子に寄り添い、そのからだを支えた


「咲子さん、大丈夫ですか。すみません、俺が出過ぎた真似をしたせいで匠くんが・・・」


「・・・いいのよ、政宗くん。あなたのせいじゃないわ。あの子は、あなたが居ても居なくても、わたしと分かり合おうとはしなかった、きっと、そう、、、」



咲子は、政宗がすまなそうに肩に置いた手にそっと触れて、無理に口元を緩めてみせた


「・・・咲子さん」


「ごめんなさいね、政宗くん。こんなお店の中で。・・・大丈夫、また来るわ。本当に、ごめんなさい」


咲子は力なく立ち上がり、止める政宗を優しく振り払い出て行った

もしかすると、匠を探して街を彷徨うのかもしれないと政宗は思ったが、これ以上、母子の間に自分が入ってもどうしようもないことを悟っていった


そして思った


もし、ここに李生をあのまま置いていたら、また違った形で解決出来たこともあったかも知れないと

自分の策は甘かったのかもしれないと



政宗はおもむろに携帯を取り出し、呼び出し音の向こうから柚希が出るのを待った

ただ

もう何もかも決着をつけなければならないと、そう伝えるために