正宗は淡々と続けた


「君の彼女を連れて帰りたい理由はなんだ。
本当に姉を心配してのことなのか。

俺にはそうは思えないのは気のせいか。
聞けば君は、大学の研究室にばかり泊まり込んで、ほとんど家に帰ってこないそうじゃないか。

君が心配しているのは、溜まった洗濯物の始末ぐらいなもので
到底、李生を心から心配しているとは思えないが」



「・・・そ、そんな訳ない、、、」


さっきまで、息巻いていた東吾も口ごもった


なぜなら東吾にとって、正宗が言っていることはほとんど正解かもしれなかった

別に姉が家に帰って来なかろうが、自分にとって姉の存在といえば家の管理と洗濯物ぐらいなものだった

お互い大人なんだし、家族の役割なんてそんなものだろうとも思う

それから、後輩の匠がたまにだが李生のことで連絡してくるので、同じことを返信するのもいい加減うんざりしているということ、いい加減ちゃんと始末してほしい、そんなことぐらいだった



「それとも、自分のお姉ちゃんが、他の人に獲られるのが嫌だって、子供みたいにダダ捏ねてるのか、クスッ」


さっきまで淡々と表情も変えていなかった正宗が、冗談交じりに笑みを見せたのが一番のダメ出しのように思えた


「そ、そんなわけないだろっ!!
なんなんだよ、アンタ!俺と姉貴のことなんて何にも知らないくせに、さっきから言いたい放題!

つーか、なんで姉貴もこんなやつの世話になってんだよ!柚希さんの方がずっといいじゃんか!
もう、俺、ホント知らないからな!
匠のことも、さっさと終わらせろよ!匠にここ教えるからな!」



東吾は、顔を真っ赤にしてそう叫ぶと、カフェから出て行った


「東吾・・・」

李生はただ、その後ろ姿に名前を呟いた