「政宗さん、本当に今までお世話になりました。このお礼は近々させていただきますから、本当に、、、」
李生は、着ていたカフェ用のエプロンをそそくさと脱ぎだした
今は丁度客も居ない
いや、居なくて良かったと思う
「どこに行くんだ」
正宗が表情も変えずに言った
「え、だから、弟と、家へ・・・」
李生は戸惑いながら言った
本当は心のどこかで、帰りたくないと思っているのは明らかだった
今はまだ帰るべきじゃないと
李生は正宗の真っ直ぐに見てくる瞳を逸らすので精一杯だった
そんな中、当初戸惑っていた東吾は、だんだんイライラとしていた
はっきりしない姉の様子いい、イマイチ理解し難いこの正宗という男と、もしかしてデキているんじゃないだろうか
姉と匠のこと、それから柚希のこと、東吾には考えることがたくさんあり過ぎて、そこにこの理解に苦しむ人物が加わるなんて考えたくもなかった
元来、自分はどちらかというと明るい性格だが、反面、人と接触するのが嫌になるときも多々あった
故に、大学の研究室で細胞だの、菌だのに囲まれている方が自分には合ってると思うこの頃なのだ
「・・・つーか」
東吾が切り出した


