「・・・そうですか、Kurenaiですね。わかりました、そちらに行ってみます。ありがとうございました」
東吾は意外にあっさりと承知した
そして、戸惑っている柚希と数秒目があったまま、見つめ合うような形になってしまった
「・・・あなたはあの頃と変わらない・・・」
目が合ったまま、ぽつりと東吾が言った
「え・・・、今、なんて?」
「あ、いえ、、 あ、そうそう、桔梗ってありますか?」
まるで、柚希の視線を避けるかのように、苦笑いを含むような声で言い
東吾は誤魔化すように、ぐるりと店内を見渡した
「ぇ・・・あ、ああ、桔梗ですね。ついこの間まで鉢植えが数個入荷してたんですけど、売り切れてしまって。それからは季節的に仕入れてないんですよ。すみません」
「あ、いいんです。もしあったらで良かったんで。姉がお世話になって、今すぐにはお礼出来ないですけどそのうちきっとお礼させてください。では・・・」
東吾はまた柚希に頭を下げるとくるりと背中を向けて自動ドアに向かった
柚希は少し考えてから、「あ!あの!」と東吾を呼び止めた
少し驚いて振り向いた東吾に、柚希は微笑んだ
「もしかして、さっきの”変わらない”は桔梗の花言葉だったんですか?」
そのあどけないとも言える問いかけに、東吾は少しクスリと笑って
「・・・そうかもしれないですね」と一言言って、すぐに自動ドアの向こうに消えて行った
「・・・そうかもしれないって、、、、」柚希は、意味深な東吾の言葉を繰り返した
そして、李生が再び自分から離れていくという、どうしようもない不安が柚希の胸を締め付けた