昔は俺のことを「好きだった」けど今はそんなに「好き」ではないのかもしれないと
ただひとり悶々と考えてしまう


政宗に預けてからは、その悶々が余計増えた気がする

オーダーを伝えるために、李生と政宗が話しているだけで、なんとなく嫉妬してしまう自分が本当に嫌だ

政宗だったら、李生の隣に合うなとか、悲観的な自分も嫌だ


だったら、自分が李生と一緒にいればいいじゃないかと思うが、どうしても匠が引っかかってしまう

もし、李生と本当に付き合えたなら堂々といれる気がするが、こんな曖昧な関係で匠と会ったら、俺は匠になんて言えばいいんだ?


そんなウジウジ妄想だけで考えている自分が


もっと嫌いだ


柚希は忙しそうな李生と政宗を横目に、ソーサーの下に千円札を挟むとそっとカフェを後にした



李生はそんな柚希に気づいていた

だが、声を掛けることが出来ない李生にも政宗は気づいていた

李生が、出口ドアをそれとなく見つめてため息をついた時、政宗は「そう焦ることでもない」とお茶の湯を注ぐ手も休めず静かに言った

ハッとして李生は政宗の顔を見たが、ハイともいいえとも答えられず黙っていた






今日もcafe kurenaiは静かな音を奏でながら

お茶の香りと植物がひしめき合い

癒しを求めに来る人々を優しく迎えている