「ね、先生、参考書も買ったし、ちょっと付き合ってくれない?」


やっぱりねと思いつつ、李生は返事をする「どこに?」


「う~んとね、それは行ってからのお楽しみ!」


匠はくるくると可愛らしい表情をいくつもつくって、なにやら企んでいるようだった

さっきの駄々こねは可愛いとは思えないけど、こういうときの匠の表情は、まるで高校時代の柚希といるようで、とても楽しくなってしまう


それが制服を着ている匠なら尚更だ

あの頃と変わらない制服をまとっているのが、匠だけで自分がまとっていないのが残念だが、わたしが空想に浸るには十分の材料だった



匠に案内されるがままに、先ほどの書店の程近くのビルに入る

入口に幾つかのショップ名や、会社名が書いてあったが、匠がエレベーターの上階を押すと読む暇もなくすぐに、エレベーターのドアが開いた


こんなところにジュエリーショップでもあっただろうか

ビルの一階はコンビニエンスストアになっていて、そのコンビニは何度か入ったことがあったが、その上の階になんの店が入っているかなど、注意してみたことがなかった