そんな・・・・
柚希は攻撃に入る前の形のまま動けなかった
志紀もまた、柚希の横を通り過ぎたままの格好だった
「李生、試合終了の合図は?」
乱れる息もみせずに、志紀が言った
「ぇ・・・、ぁ・・、しょ、勝負、・・アリ」
李生は、”あり”その言葉を小さく呟くように言った
「柚希、いい試合ありがと」
志紀はそう言って、颯爽と開始線まで戻った
その声を聞いて、柚希は我に返ったかのようにゆっくりと動き、自分も線まで戻る
そしてふたりは、中断に構えて蹲踞をし、竹刀を静かに納めた
柚希は乱れた息を押し殺し、立ち上がると数歩下がり、提刀をして立礼した
「・・・・先輩、負けました。完全に、俺の負けです」
柚希は面を取らずに言った
その声はとても静かだった
試合前の尖った声色ではなかった
「剣道とは、剣の理法の修練による人間形成の道である、、、
日頃の稽古で得た技を十分に発揮し、今後の稽古の課題を確認するために試合をし、正々堂々勝負する。
柚希は今後の課題いっぱい見つけたんじゃないの?
特に、技だけじゃなくて、精神を鍛錬すること・・・な~んて、俺も今日は武道の礼節に欠けてたかな、クスクス。
ま、とにかく、俺の勝ちだね。柚希」
「・・・・ハイ」


