シンと静まり返った道場
竹刀を携えたふたりは、静かに立礼した
そしておもむろに帯刀し、三歩進むと同時に竹刀を抜いて蹲踞(そんきょ)する
本当に静かな流れである
面をつけているために、ふたりがどんな表情でいるのか見えない
李生は、深呼吸をひとつして、次の息を吸い吐くのと同時に
「はじめ!!」と言った
李生の掛け声で、ふたりは立ち上がった、いや、柚希の方が幾分か速かった
一足一刀の間合いを取って、うまく重心を移動しながら真っ直ぐに振りかぶる
「メン!!」
だが、その手を志紀の竹刀が防御する
それに柚希は怯むことなく、素早く胴への攻撃に入る
「ドウ!!」
綺麗に志紀の胴に打ち付けた
一本目はたった二攻撃の、あまりにも早い柚希の一本に終わる
「先輩、なんのつもりですか。これは真剣勝負ですよね、ふざけるのもいいかげんにしてください!
練習だってもう少しマシなやり方しますよ」
「クスクス、だって、俺が最初に取ったら面白くないよね。こっからが本当の勝負だよ、柚希」
「・・・・先輩、余裕ぶってると、痛い目みますよ」
「はは、だったらどうしよう(笑)
俺、一応全国勝者なんだけどな~。それ、柚希に譲るしかないね、クスクス」
「片田、二本目いって」
柚希は志紀を無視するように言った
「ぁ、うん・・」
ふたりの表情はわからない
ただ声色がふたりの心情を微かに表している
李生はただ交互にふたりを見つめて、鳴り止まない鼓動を服の上から抑えるしかできなかった


