#12


「李生、はじめの掛け声だけでいいから、審判して。あとは俺らで判断するから。
試合は3本勝負で。柚希もそれでいいよな?」


志紀が目配すると、柚希は黙って頷いた


「じゃ、はじめるか。と、その前に、この勝負する意味わかる?」


「・・・意味?」


柚希は眉間に皺を寄せた


「李生もだよ?」


え・・・・

わたしもって・・・


「李生がすぐに選ばなかったから、今こうなってるのわかる?」

「選ぶって・・・、どうしてそうなるんですか。今日の先輩少しおかしいです」

わたしは声が震えるのをなんとか抑えて言ったつもりだが、微かに口元が引きつるのを感じた


「そうですよ、志紀先輩。俺は真剣に先輩と勝負したいだけなんです。ここに片田は関係ないです」


柚希が李生に加勢するように言った



「クスクス、柚希、俺に勝つ自信ないのか?俺は自分の大事なもの掛けるって言ってるだけだよ。
それだけ、勝つ自信があるってこと。

柚希が勝ったら、李生を自由にしてあげる」


それを聞いて、柚希は躊躇うように言った

「・・・・ひとつ、聞いていいですか?

片田の前でなんだけど、先輩、片田のこと本気なんですか?」


え、、、

・・・柚希くん、それを志紀先輩に尋ねても無駄だよ

わたしは先輩の”オリオン”なんだから