「どっちって、先輩に決まってるじゃないですか!

・・・彼女なんですから」


わたしが志紀の真意を探ろうと、口を開くのを躊躇っていると、少し怒ったように柚希が返した

それはわたしが答えるのを、遮ろうとしているようでもあったのは考えすぎだろうか

わたしに至っては、まだ冷静にふたりの動向を見ていた

いや、激しく動揺しては志紀に本当の気持ちを気づかれてしまう、そう思い、必死に自分を装っていたのかもしれない

確かにわたしの心臓は

遠くで必死にその音を隠していた



「え~、彼女だから俺を選ぶとは限らないよ~?

柚希のそういうとこ、よく試合にも表れてると思うな~

相手はこう来る、そういう変な自信伝わってくるよ~?

俺に勝てないのはそういうとこだって、わかってなかったのかな~?クスクス」



柚希が


”俺に勝てない”

その言葉のところで、ピクリと片眉を動かしたのがわかった

そして拳を握って


「・・・・志紀先輩、だったら俺と勝負してください」

と言った




志紀先輩は、嬉しそうににやりとした

まるで、柚希がそう言ってくると予想していたかのように

そう志紀先輩が望んでいたかのように