志紀は続けた


「ね、君、名前なんていうの」


「・・・か、片田、李生、・・デス」


李生は見上げていた顔を下げて、小さな声でそう言った

顔もからだも、雨と血と泥でぐしゃぐしゃだった

その姿が急に恥ずかしくなった


「李生か。ちょっと似てるかもね。

俺ね、実はあんまり夢にその猫が出てくるもんだから、またこの川原に猫の様子を見に来たんだよ。

そしたら居たんだ、今君が怪我してるみたいに、片耳がちぎれてさ。

さすがの俺も泣いたね。俺の夢に化けて出てくるのも無理ないって思ったんだ。

俺がまたここに捨てなきゃ、オリオンは怪我しなかったのにって。

あ、その猫、オリオンって名前つけてたんだ。俺、星座好きだから、オリオン座からつけたんだよね。

普段はブルーの目なんだけど、暗がりでは赤く光って綺麗なんだ。


似てるだろ?李生とオリオン、名前がね、クスッ」


志紀は口元だけ少し笑った

李生自身は、志紀の言いたいことがわからず、ただ黙って聞いていた


・・・名前が似ているから、どうだというのだ、、、