彼は、わたしと目が合うと口を開いた


「昔さ~、ここで捨て猫拾ってったら、すごく怒られたんだよね。

でさ、拾ってきた場所に捨ててきなさいって言われたから、しょうがなくここにまた捨てたんだ。

そしたら、毎晩夢を見るんだよ。どうして捨てたのって。

でもさ、最初に捨てたのは俺じゃないんだよね。

なのに、その猫は俺に化けて出るんだから、猫なんて拾うもんじゃないってそんとき思ったんだ」


え・・・・


志紀は急にそんなことを話しだした

軽い口調の割に、顔は無表情だった

切れ長で二重の瞼は、ほとんど瞬きをせず、じっと李生を捕らえている


薄い唇は白い肌にほんのりと色を差し、シャープなフェイスラインを辿ると、長めの襟足が首元にかかっている


この東野森 志紀を知らない生徒はいないだろう


国立精神・神経医療研究センターで医長を務めた父親が開業した、東野森メンタルクリニックの息子である

また母親も精神科医師であり、近年増え続けているイジメによる心身のメンタルケアなどに貢献するメンタルアドバイザー兼教育評論家として、最近よくテレビで見かける有名人だ

そして彼自身、学校では生徒会長、剣道部の主将であり全国覇者でもある

なにより、その容姿端麗な彼は誰よりも際立っていた