予想通り、匠は参考書など最初から買う気などないのだ

書店の参考書売り場まで来たが、一向に選ぶ気配がない


たださっきからわたしが気になるのは、他の客の目



制服姿の匠と、オフィス帰りのような服装のわたし

周りにはどう映っているのだろう

ただなんとなく、世間に見られたくないわたしの思いと逆に
こんなに可愛らしい高校生を連れて歩いている自分になんとなく優越感を感じてしまうのはなぜだろう

きっと姉と弟ぐらいにしか見えないのだろうと思いつつ
わたしの中にも満更ではない感情があるのは確かだった


”女のワガママ”


かもね




「ねぇ、先生。あ、今日は李生でいい?」


ご機嫌で李生の顔を覗き込んできた


「だ~めっ、誰が聞いているかわからないでしょ?わたしたちの関係は、誰にも秘密なんだから」


「う~、けちっ!今日は先生の誕生日なんだからそれぐらいいいじゃん!」


けちと言いながら、先生と呼ぶ匠はやっぱり素直だ