#1

「先生、来年大学に合格したら、先生のことちゃんと親に話したいんだ。
本当は今でも黙っているのは嫌なんだけど・・・」


・・・まただ


彼がこういう話をしたのは初めてじゃない



「・・・そうね」


片田 李生(カタダ リオ)は、前回の課題をチェックする目を休めることなく、とくに感情を込めずに返事をした

家庭教師としては、合格してもらわないと困るけど、親に紹介するだなんて冗談じゃない

10も年下の、しかも高校生をたぶらかしたなんて世間で通用するわけがない

これだから、裕福な世間知らずのお坊ちゃんは疲れる