「申し遅れました。自分は、burn blue(バーン・ブルー)プロダクションの黒崎と申します。」
スーツの内ポケットから名刺を出すと、私の目の前に差し出した。
「burn blueって、大手の芸能プロダクションでしょ!?」
座っていたはずの泉希が、驚いた表情をしながら、差し出された名刺に私の背後から身を乗り出した。
「で、その方が何か?」
私の表情は相変わらず。
ムッとしながら、冷たい口調のまま。
差し出された名刺も受け取る気もないと言わんばかりに、腕を組んで男をにらみ上げていた。
「噂は聞いていましたが…ぜひ、大帝華劇団に入りませんか?」
優しく緩む男の口元。
それを引きつらせるかのように
「二度と、目の前に現れないで下さい!!」
喧騒を引き裂くかのように、大きな声で怒鳴った。
噂を聞いたなんて言っているけど。
顔だけ作家。
中身ナシ。
売るのはカラダ。
そんな噂を聞いてきたんでしょ?
こんな事されたら。
よけいに顔だけ作家のレッテルが張られちゃう。
それに、華組なんて興味ない。
名刺を差し出した男の手をバシッ!!と勢いよく払いのけると。
そのまま、トイレに向かって歩き出した。



