「ホント、申し訳ないです。」
男の人は、軽く頭を下げた。
「一般参加の人が、どうしてサークル参加の後ろを通っているんですか!?」
いくら壁際の席って言っても、この狭いスペースを通るなんて考えられない。
「すみません…迷ってしまって。」
頭の後ろに手を置きながら、ゆっくりと頭を上げた。
そして、私の顔を見ると、不思議そうな顔をした。
「何か?」
眉をゆがめながら、男をにらんだ。
「…もしかして、宝条…宝条桜さんですか?」
「そうですけど?」
ゆがんだ眉は、さらにシワを深く刻んだ。
また来たか…
こうやって理由を付けては、声をかけてきて。
『ファンです。』
とか言って、下心全開で近寄ってくるんでしょ?
何度、そんな奴が来たか。
最悪、ちょっと視線が向けられただけで。
『オレに気がある。』
とか言い出す奴もいたな。
まあ…この男の人、背は高くて、爽やかなイケメンって感じで。
黒縁のメガネが腐女子のポイントをつきそうだけど。
こういう人って、顔だけで性格は俺様だったりするんだよね?
ハアッと深いため息をついた。



