"だからその間に、飛び降りろ"
「ここから、向こうに」
「そんな…」
こんな高くから…
フェンスの下に広がる街は、とても遠い。
"下に川があるから、そこに降りれば、助かるかもしれない"
「時間がない…」
ユキはそれだけを告げて、あたしを抱きかかえる。
そして、下を見据えた。
"絶対に莉子を、守ってみせろ"
「…信じろ…っ」
トンッという足取りを最後に、体が宙に浮かぶ。
「俺と……っ」
涙でかすれた視界に…
ユキが、優しくほほ笑むのが見えた。
「隼人のことを……」
それを最後に、あたしの意識は深い闇の中に吸い込まれていった。

