「もう…ユキ、かわいい」


またあたしはユキに抱きつく。


ユキはますます照れているようだった。


「……笑うなよ。ほんと俺…だせえ…。あいつらだったらもっと気のきいたこと言えるのに」


拗ねたように呟く。


そりゃあ…カフェのみんななら甘いセリフの嵐になると思うけど…。


「こういうの慣れてないのは…嫌?」


「そんなことないよっ」


それ以上に…


「今のユキが一番いいっ」


今まで背伸びしてきたユキ。


そのユキが本来の自分でいられる…


そんな彼の素顔を見れたのがすごくうれしかったから。


あたしの笑顔を見て、ユキも機嫌を直したように微笑んでくれた。


丘の上に吹く風に吹かれて…


その向こうにずっと続く空へ。


ここより遠く、遥か彼方で誰かが微笑んでくれた気がした。