「ほら、また無茶するから…。ちゃんと連れていくよ、行こう…加奈子のところに」


先生が身なりを整えながらそう言った。


先生は車イスにユキ君を乗せる。


「莉子さん、辛いかもしれないが君はここで…」


「嫌です!!ユキ君をもう一人で辛い目に合わせたりなんかしないっ」


「…」


ユキ君は何か言いたげだったけど黙っている。


もう、荒んだ目に色はなかった。


「わかったよ、着いてきなさい」


先生はそう言うと車イスを再び押し始めた。


長い廊下を歩いて、エレベーターをいくつも乗り継いで…


辿り着いたのは手術中のランプが消えた、静かな部屋。


そこに加奈子さんは眠っていた。