楽しそうだけど──なんの感情も読み取
れない、ぞわっとするほど冷徹な声。



「本当に、臆病じゃないって、言えるの
?私に逆らえないくせに?本気で恋那ち
ゃんを好きなのに、恋那ちゃんを傷付け
ようとしてる私を叱ることも出来ないの
に?



私が怖いんでしょ?本当は逃げたいんで
しょ?ここから消えたくて、たまらない
んでしょ?──ごめんね。逃がしてなん
か、あげないよ。



だって日向は、私の計画に必要な人材だ
から。日向が居ないと、私の目的は達成
されないから」



──ああやっぱり。

今日も俺は言い返せない。



あいつに負ける。

妖艶に微笑む夏希に、俺は何も出来ない
。俺は、無力だ。



どうして、なんて。

わかってるけど。