俺は少しだけ、言葉を濁す。



「奪うっていうか……。なあ、やっぱり
無理だって。……こんなの、柄じゃねぇ
よ」




だけど、電話の向こう側から返ってきた
のは、嘲笑だった。



『フフッ。今さら、何いってんの?柄じ
ゃねぇよって、じゃあ、日向ってなに?
純粋でピュアで、優等生でって言い切れ
るの?僕は真面目だからこんなこと出来
ません、って?』



夏希の言葉がグサグサ刺さってくる。



純粋なんかじゃない。
優等生なんかじゃない。



ずっと計算で生きてきたから。



夏希だって、それをわかってて言ってる
んだろうけど。



何も言い返せない俺に、夏希はさらにと
どめを刺す。