私は、深々と頭を下げた。今、圭君はど んな顔をしているんだろう。 私には、それを確認する勇気はないけど 。 ──夏だというのに、吹き過ぎる風が妙 に冷たかった。 「ごめんなさい。圭君の事は好きだけど ……恋愛対象では、ないから」 そう言うと、柔らかい、優しい圭君の声 が、上から降ってきた。 「椎名……顔、上げてよ」 そう言われて顔を上げた私をみて、圭君 は笑った。 笑いながら、私を優しく抱き寄せた。