「一体どうなっているんだ?」
 無残な形の理恵の亡骸が運び出されていく。それを見送りながら小島は吐き捨てるように言った。傍らの恵は襲ってくる吐き気と戦っていた。
 今まで二人は様々な遺体と接してきた。だが、今運び出されていく遺体は初めて見るものだった。
 意識を失った少年達は救急隊員の手によって近くの病院に搬送されていく。その中に美鈴の姿もあった。
 屋上の血だまりの中を鑑識課員が手がかりを求めて動いている。マゴットの体液も献体として採取されていた。
 ただ一人意識のあった少年(榊啓介)は呆然としていて事情を聞ける状態ではなかった。 想像も出来ないことがこの屋上で起こっていたことが小島にはわかっていた。
 わかってはいたが、今はどうすることも出来ない。倒れている生徒達の意識が戻っても、それは変わることがないだろうと小島は思った。
 何かがこの街で起こっている。
 不吉な予感が彼を包んでいた。