「おはよう。今日はね、早起きしてサンドイッチをたくさん作ったの。……今日も行くんでしょう、月光の丘に」

「えっ!お母さん、知ってたの!?」

「ええ。行くなとは言わないから、ちゃんと言ってからにしなさい。ヒナが自分から行動してくれた事は嬉しいけど、心配なんだから」

「ごめんなさい。……お母さん、これから話す事笑わないで聞いてほしいの」

「ええ」



少女は母にすべて打ち明けた。ただ黙って耳を傾け、話が終わると――



「そうなの。やっぱり……あそこは特別なのね」



母は懐かしそうに微笑み、それから少女にこう言った。



「その子が何者でも何も変わらないわ。どんな人にも、ものにも、心と命があるの。姿だけで決められない事、たくさんあるわ」



少女はそれから考えました。



マナトの最後に言った言葉を。



母が言った言葉を。



そして、少女はサンドイッチをバスケットに詰め込み、母に言います。



「お母さん、わたしマナトに会ってくる」

「そう。気をつけて行くのよ」



母は笑顔で少女を送り出しました。