「本当にここでよかったのか?」




バルドは不満げに呟く。




「ここがよかったから来ただよ!!」




当然のように声を上げる。

そう、アレンがここに住む決めたのだ。



このアパートはアレンが決めたもので、
本人は『アルノスシティの町で一番好きな場所だから。』
だそうだ。



確かに、アレンが住みたくなる気持ちは分かる。



少し歩けば大きな商店街だってあるし、
近場にもちょっとしたお店もあって自然豊かなで便利な場所だ。



…だけどちょっと遠くないか?

……リリィさん家に。




「リリィん家のこと?大丈夫だよ!…歩いて1時間だし。」


「1時間って頻繁会うんだぞ?正直俺はリリィさん家の目の前のアパートでもよかったんだが…」


「あそこは駄目、設備悪いよ。色々と古いし。」


「そうか…」




タイルに導かれているアパートに進む。



アパートの右側の階段を進み鍵を入れドアを開ける。


そこは思っていたよりも広く個室が3部屋、ダイニングの間取りだった。



個室が3室あるせいかダイニングキッチンはそこそこ狭いが使いやすさとしては良いものだった。




「いいでしょ!」




アレンが振り向く。




「あぁ、キッチンに棚あるのは助かるな。」


「あと、窓側の部屋がすごいんだ!」




パタパタと小走りし、ダイニングの左壁のドアを開ける。



バルドもつられて進む。



そこには小さな窓とベッドが置いてあった。




「すごいだろ!」




アレンが窓を開け外に指をさす。




「──うん、そうだな。」



バルドはアレンを見て笑って返した。



アレンが指さした方向は自然公園だった。
バルドも何度か来たことがある所で子供から老人まで広くひたしまれてる場所だ。
公園の中心には立派に根づいている樹木がある。


ここからは広場全体を見れる景色だった。




「住むときは俺、この部屋使っていい…?」




許可を求めるような瞳でバルドを見つめてくる。
…いや完全に求めている。


キラキラとしたアレンの黄緑色の瞳は捨てられた子犬のようで、バルドはある意味脅された気分を味わう。



「住めたら、な。」




苦笑い混じりに軽く否定した。