「そういえば、四月朔日君…」

俺は彼女を背負いながら、ゆっくりと歩いていた。流石に応急処置だった下駄は擦れてしまい、彼女は俺の背に乗って帰路についていたのだ。

「ん?どうしたの?」

「…ありがとうございました…今日は楽しかったです…」

たくさん歩いて疲れたからか、彼女は微睡みながら呟いていた。静かに降り注ぐ月光が2人の歩く道を照らす。

彼女は俺の首もとに顔を埋めると、俺は小さく微笑んだ。

「…俺も楽しかったよ…雪羅さん」

彼女が寝息をたて始めるのを確認すると、俺は静かに彼女の唇に自身のそれを合わせた。

「…おやすみなさい。雪羅さん」

俺はくすくすと笑いながら、夜道をゆっくり歩いた。