白地に淡い青色の花柄の浴衣に、桜の帯。

薄化粧をして髪を大きな薄紅色の花がついたシュシュで一つに結った主様は、可愛さ綺麗を併せもち人の視線を引き付けるような姿だった。


俺は香水臭い女を突き飛ばし、主様を後ろから抱き締めた。主様が自分の腕の中で少しもがいたが、俺はそんなことお構いなしで女を見た。


「悪いけど、アンタみてぇな香水臭い色ボケ婆なんかより俺の彼女の方が何万倍も可愛いから。だから…俺の前から消えて?」


俺は極上の笑顔で女に吐き捨てる。女は顔を真っ赤にした。「アンタなんかこっちから狙い下げよ!」という鉄板の捨て台詞を吐くと、ハイヒールでよくあんな速く走れるなと思うような走りで逃げていった。


「…鬼灯、逆ナンされてたの?」

主様がきょとんとした顔で俺の顔を覗き見る。

「もう5回目でしたよ…」


「てか、逆ナンする人って本当にいるんだね」


「そこですか…」と俺は呆れながら呟いた。主様がくすくすと小さく笑う。


俺は主様から離れると、手をつないで歩きだした。