それから数日後、
私はいつものノリでリクちゃんを誘い出した

いつものように駅前の広場で待ち合わせをして、初めて一緒に行ったあのオムライスのお店に行った

平日の夜で
あの日と同じようにお客さんで賑わった店内
席についてリクちゃんとメニューを広げた

「今日もつぐみちゃんLサイズだよね?」

ニヤっと笑う見慣れたリクちゃんのすきっ歯が今となってはなんだか愛らしく感じる

「そうだね、そうしようかなぁ・・・」

こうやって向き合って
仕事とかトモの愚痴とかたくさん聞いてもらったな

オーダーを済ませた後、リクちゃんが、ふと言った

「つぐみちゃん、元気ないね?」

リクちゃんの勘の鋭さにドキドキしてしまった

「そう!?お店が忙しかったから疲れてるのかも・・・」

「そっかぁ、大変だったね」

リクちゃんの優しい言葉も
今日は悲しい
私はなんとか話の矛先をリクちゃんに向けた

「ねぇ、そういえばこの間言ってたバンドのコンテストは、どうだったの!?」

先週、リクちゃんのバンドがコンテストに出場していた
私はまだ結果を聞いていなかった

「あぁ、実は審査に通って次の上位審査にいけることになったよ!」

リクちゃんがニコニコしながら言った

「え!?すごい!おめでとうー!それってプロになれちゃったりするの?」

「うん。優勝すればデビューもできるけど。まあ、そこからがまた大変だけどね」

リクちゃんのバンドが本格的に有名になれば、きっと嫌でも会えなくなるだろうな・・・
そんな風に思いながら、しばらく私達はバンドの話をしていた