それから2ヶ月が過ぎても
トモはずっと優しいままだった

マメにメールをくれたり
毎晩、おやすみの電話をかけてくれたり

忙しくても
週に一度はデートもしたし
出掛ける時間の無い時は
トモが私の 部屋に泊まりにきた

私は付き合いたての頃を思い出して
安心して、浮かれていた

リクちゃんを呼ぶ事も
以前より少なくなっていたそんな頃

クリスマスの夜に
トモが有名なホテルを予約してくれた

二人でお洒落をして、
最上階のレストランでディナーをした

夜景が綺麗な最高の眺めと
美味しいシャンパンに酔いながら

私達は昔話で盛り上がった

「お前さ、市川って覚えてる?」

トモが突然、懐かしい名前を口にする

「覚えてる!専門の時の市川くんでしょ?懐かしい」

「あいつも、お前の事好きで取り合いだったの知らないだろ?」

ビックリした
そんな事、全然知らないし

「え?嘘、知らなかったよ」

トモと付き合う前
私はトモの事が好きで好きで
他の人なんて目に入らなかったから

「トモだって、すっごくモテてたよね」

私もトモが他の誰かに取られないか
心配で仕方なかったんだから

「俺はお前しか見えてなかったけどね」

サラッと言って、シャンパンを飲む
そんなトモの動作に見とれてしまう

やっぱり、トモは格好いい
誰にも渡したくない
ずっと私を見てて欲しい

その時

「つぐみ、これずっとつけてて」

「え・・・?」

突然
トモから小さな、白い箱を手渡された

これって、もしかして・・・

箱を開けて
私は、息を飲んだ

中には、ずっと憧れていた
キラキラ光るものが入っていたから

「結婚しよ」

それは
私が夢の中で何度も聞いた台詞だった
うっとりしている私の右手の薬指に
トモが指環をいれてくれた

「嬉しい・・・」

嘘みたいだった
憧れていたその通りの事が
目の前で起こってる

夢みたいな事実に
私の目から
自然と涙が溢れていた

幸せいっぱいの私は、
その時
失う人がいるということを
まだ、考えてはいなかった