「あ、時間だ。じゃあ、私売り場戻りますねー」

そう言って、
私より先に休憩に入っていたカミちゃんが戻っていった

一人残った私は
ケータイをチェックする

思わずため息が漏れた

あの夜から
リクちゃんと連絡を取っていない
キスをしたあの夜から

リクちゃんは、今、どう思ってるんだろ

トモで、塗り替えられたからなのか
私は、あのキスが少しだけ遠のいた記憶に感じ始めていた

でも、ハッキリ分かっているのは
トモは間違いなく必要で
願わくば、
リクちゃんの事も失いたくない

リクちゃんは私を楽しませてくれる
大切な存在なんだから

そう、リクちゃんの事も
失っちゃいけない

私はドキドキしながら
リクちゃんのケータイを鳴らした

いつものように2、3回目のコールで
リクちゃんは出た

「リクちゃん!?今、大丈夫?」

「大丈夫だよー。どうした?」

リクちゃんは、いつもと変わらない
やっぱり悩む必要なんてない

「この間はごめんね。結婚式、なんとか間に合ったよ」

私は、わざと普通にしゃべった

「そっか、よかった!」

リクちゃんもいつも通りの声
これなら大丈夫

「うん、ホントありがとう。お礼にリクちゃんの食べたいものご馳走させてよ。今夜ヒマ!?」

「えー、マジで!?いいのに」

完全に
私達はいつものペースだった

話し合って結局
私がずっと食べたかった
もんじゃ焼きを食べに行く約束をして

私達は電話を切った

リクちゃんを失うかもしれないなんて
ちょっとでも悩んだ自分が可笑しかった

そろそろ、メイク直ししなくちゃ

私は立ち上がって
社食を後にした