私は朦朧としながら駅前の広場のベンチに座り込んだ

目の前の景色が回って見える
こんな酔い方をしたのは
お酒を飲み慣れなかった高校生の時以来だ

その時

「あれれー?大丈夫かなぁ?」

突然変な男が近づいてきた
馴れ馴れしく私の隣に座って密着してくる

「気持ち悪いのー?じゃあさ、俺んちに行こっか、すげー近いから。ね!」

男は無理矢理私の手を引いて立ち上がらせた

私はなかなか抵抗する力が入らない

「いいです、迎えが来るから。待ってるの!」

「えー?いいじゃん、ウチ来なよ。仲良くしよっ!」

今度は強引に肩を抱かれる
男の顔が近づいてくる

「や!やめてください・・・」

大きい声が出ない
どうしよう、怖いよ
リクちゃん早く、早く迎えにきて

男の手が腰に回ってきて唇が耳元に息がかかるほど近づいたその時

「すみません!離してください、俺の彼女なんです!」

そこに聞き慣れた声と
リクちゃんの男らしい腕が伸びてきて

私をすごい力で引き寄せた
思わず私は
リクちゃんにしがみついた

リクちゃんは全速力で走ってきたのか
息が乱れていて
体温が高くて
また、あの時のいい香りがした

「なんで来ちゃうんだよー」

男は捨て台詞を吐いて居なくなった

私はそのままリクちゃんに抱きついて
泣き出してしまった

「リクちゃん、怖かったよぉ・・・」

リクちゃんは無言で、私の背中を優しく撫でてくれた

「行こう、そこに車止めてあるから。家まで送るよ」

そう言って、私の手を引いて歩き出した

「大丈夫?歩ける?すぐそこだから」

「うん」

鼻水をすすりながら、私はリクちゃんに連れられて車に乗り込んだ