「つぐみちゃん!」

「え?」

1つ目の駅の前で
押し黙っていた私に突然リクちゃんが言った

「手繋いでいい?1駅分だけ」

「手?」

リクちゃんが勇気を出しているのが
表情からなんとなく伝わってくる

手ぐらい、いっか・・・

「いいよー」

私からリクちゃんの手を握った

リクちゃんの手はやっぱり小さくて
子供みたいにあったかかった

「フフフ、やっぱ小さーい」

「うるさいよ!」

私が笑うとリクちゃんも笑った
一瞬で和んで、空気が元に戻った

「ねぇ、カラオケ屋さんのバイトって楽しい?」

「めっちゃ楽しいよ。お客さんいない時なんか歌い放題」

「へぇー、いいなぁ」

そういえば・・・

私はリクちゃんの歌声を思い出す
甘くてよく通る、ちょっとハスキーなリクちゃんの声
無性にもう一度聞きたいと思った

「カラオケ行ってないなぁー。今度連れてって!」

「いいよ。つぐみちゃんの歌聞きたい」

「私、歌ヘタだよ。いつ行く!?」

そして私達は次会う約束をした

駅に着いたら
リクちゃんのバイトにちょうどいい時間で
この前みたいに私の乗る電車の改札でバイバイをした

私の手には
しばらくリクちゃんの手の温もりが残っていた