「ちょうどその頃、バンドのデビューが決まっててそれで余裕が無い上に、もし、またつぐみちゃんに裏切られたらと思ったら、あいつなりに思い詰めてしまったらしい。弱いよなー。俺だったら絶対好きな女は手放さないけど」

「うそ、リクちゃん、そんな風に思ってたの!?」

その事実は、私の想像を絶していて
すぐには理解できなくて
でも考えるほどに切なくさせた

私が、リクちゃんを
そんな心境にさせてしまっていたのだから

「うん。それでデビューして、結構順調に人気も出てきて余裕ができた途端、つぐみちゃんに会いたいとか騒ぎだしたからライブに誘えば?って言ったわけ。だから、来て欲しいんだけど」

私はカガくんからチケットを受け取った

リクちゃんが、今でも私の事を
想ってくれているなんて
嬉しくて、カガくんの前なのに
泣きそうで顔が上げられないよ

「あのさ、リクに聞いてきてくれって言われたんだけど。つぐみちゃん、彼氏できちゃった?」

「ずっと、いないよ」

「そっか、良かったー。じゃあ絶対来てね!あいつはつぐみちゃんが居ないとダメだから。ごめんね!仕事中」

カガくんは、最後私の肩をポンッと軽く叩くと勢いよく店頭を出ていった

私は、半分ボヤけた視界の中、彼を見送った