そして私と姉は引き離された。
私は薄暗くて狭い部屋に一人残されたのだ。
(だめ、気を強くもたなくちゃ)
どうしてさらわれたのか。
どうやったらこの人たちは開放してくれるのか。
それともいつか殺されるのか。
心の中は不安と恐怖で凍りつきそうだった。
それでも正気でいられたのは一緒に捕まっている姉のおかげだ。
(お姉ちゃんは冷静だった。私も冷静にならなくちゃ)
震える身体は仕方なくても、心は強くもたなくちゃいけない。
あれから黒服の六人の集団はそれぞれ部屋を出て行った。
一人一人が名前を呼び合っていたため、誰がどれか整理してみることにした。
まず、一人目。黒スーツ眼鏡の堅物そうな男が『エース』。
何人かわからないが、日本人ではないだろう。
二人目。金髪に派手な外見の下品な言葉を話す男が『エックス』。
顔つきは北欧系だ。ちなみに姉を犯したと公言した男。
三人目。日本人で切れ長な目をした男が『ケイ』。
見ている限り始終冷静な説明口調であった。
四人目。屈強な黒人の男が『キュウ』。
カタコトの日本語で喋る所を見ると、日本に来てまだ日が浅いのだろう。
五人目。プラチナブロンドのさらさらロング。一見では優男が『アイ』。
この男、私の髪をつかみあげたり結構見た目と反して乱暴で冷酷なようだ。
そして最後に六人目。栗色の髪をつんつんと上にあげた男。
『ディー』と呼ばれていた。
ずっと仏頂面だったのを覚えている。私たちをめんどくさそうに見ていた。
整理してみると、男たちの名前が全て、アルファベットに関係していることがわかった。
コードネームかもしれない。
それよりもどうやって逃げるか・・・。
鎖は依然そのままである。
