私が抱えられたまま広間に入るとみなさんが目を丸くしてこちらを見ていた。

穴があったら入りたいとはこのことをいうのだろう。

私は顔をあげられずうつむいたまま座る。

土「呉羽」

土方さんに声をかけられて顔をあげる。

土方さんも私の瞳の奥を見つめていた。

呉「どうしましたか?」

土「お前なのか?」

呉「え?私ですけど・・・・」

土「そうか」

すこし安堵した表情になる土方さん。

心なしか周りに座っているみなさんも同じような表情になる。

呉「みなさん、どうされたんですか?なにかあったんですか?」

土「呉羽、お前に質問していいか?」

呉「はい・・・」

土方さんは私の返答を聞き、なにやら考えていた。

まるで言葉を選んでいるかの様だ。

すると、頭の中に声がひびく。

“あなたが一体誰かを知りたいのよ。あなたが眠っている間にわたしがあなたの体を借りたからね”

この声は、濃姫・・・・?

借りたとはどういうことだろうか?