舞い散る花の導く先に

信「お濃。きっと現世でおぬしと逢いまみえるのはこれが最初で最期じゃ」

濃「え?どうしてでございますか?」

信長様の言葉に私は大きく目を見開く。

信「現世でのわしは反幕府派じゃ。おぬしが今身を置いている新撰組とは敵対する立場。だからこの先逢うとすれば戦場でということになるだろう」

すこし寂しそうに微笑む信長様。

ああ、あなたもそのような微笑みをされるのですね。

濃「そう、ですか。・・・仕方がないことなのかもしれませぬね。私たちは一度滅びた身。この時代を生きているものではないから・・・・」

信「ああ。わしらの時代は終わったのじゃ。現世ではおぬしは呉羽として、わしは桂としての人生を歩むのが定めなのかもしれぬのう。」

きっと、もう現世では二度と会えないのだろう。

ならば。ずっと思っていたことを聞いてもいいのだろうか?

私はそっと口を開く。

濃「信長様?」

信「なんじゃ?」

濃「お濃はずっと信長様に聞きとうことがございました。」

穏やかなひとみで私を見つめる。

濃「あの本能寺の変でお濃は信長様と共に逝きました。だけど、信長様は共に逝くのがお濃でよかったのでございますか?」

信「なんでじゃ?」

驚いたように言葉を発する。

濃「死してなおずっと考えておりました。私は正室でありながら子もなせずに信長様のおそばにいました。だけど、側室の吉乃様は子もなしており、信長様にも愛されておりました。」

信長様は黙って私の言葉を聞いてくださる。

そして私はそのまま言葉を続ける。

濃「吉乃様は病気でお亡くなりになり、その時の信長様はたいへん憔悴しきってみるに堪えませんでした。だからこそ思うのです。本能寺の変のときに私ではなく、吉乃様がおそばにいたほうがよかったのではないかって・・・・」

ずっと聞きたかったこと。

なのにいざきくと逃げ出したくなる思いに駆られる。