セーラー服をなびかせて一目散に窓にへばりつく彼女。

 その謎の言葉にぎょっとする。


「きゃぁあっ、こんなとこにきたぁっ」

 ……こ、コンナトコ?

 湧き出しそうな怒りを「平常心、平常心!」と何度も呟いて己に言い聞かせてた。


 そんなオレのことなんか露知らず、彼女ははっと何かに気づいたようにずんずんとコチラに向かってくる。

その身に纏う鬼気迫る空気に、思わず圧倒される。


「ちょっと、葵!」

 ソファの片膝をかけて乗り上げ、彼女は独特のあの微笑み。
ドキリとする暇もなく。


「ぐえっ」

 スッとネクタイをひっぱりあげられ、オレは呼吸困難に陥る。


「財布渡しなさいよ」

「は……?」

 カツアゲかよ!?


「んもー、早く!」

 ぽかんとするオレには、首元をさらにグイっと締め付けられる。

「し、死ぬ……」

「あっ、はっけーん」

 オレの悶えなんか気にするそぶりもなく、彼女はヒョイとオレの上着の内側から二度も財布を取り上げる。

と同時に、掴んでいたネクタイをぱっと離された。


「ちょっと、待て……」

 咳き込みながら、急にフッと緩んだ襟を片手で抑えて彼女の腕をつかむ。


 しかし、そこはさらに一枚上の彼女。

オレにしか聞こえないような悪魔の囁き。


「大事な話があるんでしょ、……社長?」


 うっ……