「こんなの必要ないじゃん!」

「でもほら、僕もお年頃だからさ」

「だめだめだめー!そんなのあたしが許さない!!」

 ぶんぶん首を振る彼女。

困っている兄なんかお構いなしだそうだ。

 しかし、まあ、会話の途中にアイスをかじるあたり、なんとも不思議な光景なのだが。


「お父さんたちも心配してくれてるし」

 彼の一言で、彼女はピシリと姿勢を正した。


なにかあるんだろうか……?

なんて思ってしまったのがオレのいけないところ。


「だって、絶対アノおじさん怪しいじゃん!!」

 ちらりと変人でも見るような視線を向けてきた。

さすがのオレだってカチンともくるさ。


「あ~の~なぁ~……っ!」

 こんな小娘なんかに言いたい放題言われてたまるか!


「これでも、オレはこの『理想恋愛屋』の社長なの!わかる!?
そんでもって、まだピチピチの二十八歳!!」

 女子高生にむかってピチピチっていうのもなんだけど。

「ふうん……」

 ジト目で、まだ絡みついた腕から離れようとしない彼女は彼に向きなおす。


「わかったわ、お兄ちゃん」

 彼もオレも次の一言を待つ。


意志の固そうなその視線。

どうしてオレまで緊張しなくちゃイケないのか分からなかったけど。


「あたしが品定めするわ!」

 片手のアイスがその言葉に怯えるように、溶けかかっていた。