一つしかないデスクの前にある、輸入物ではないけれど、意外とすわり心地の好いソファを勧めた。

 その時。


「ちょぉぉおお……っっ」

 彼の後ろだ。

「──っとぉおおおおっ!!」

 バッターン!と勢いよく扉が開かれる。

その叫び声はさっき響いていたあの女の子の声。


「お兄ちゃん!!」

 そういって制服姿の女の子は、今しがた入室した爽やか青年の腕に飛びついた。


 っていうか、扉壊さないでくれる?


 グラつく扉を無視する彼女にはきっとこのオレの不安は伝わっていない。
しがみついた青年の顔を覗き込むように抱きついてる。

 彼もどうやら困っているようだ。


「もう、ハルキったら」

「お兄ちゃんがいけないんだからね!」

 彼を攻め立てる彼女は、よくよく見ればかわいい顔立ちだ。

淡い茶色の肩までのクセッ毛。
つり目がちの大きな瞳は、その小さな顔をさらに引き立たせるようだ。

スタイルも……うん、なかなか。


 アイスを片手に器用にしがみついてる姿は、まるで母を求める子犬。

いや、恋人?


 一人悩んでいるオレに気づいた青年が、乾いた笑いを交えてもう一度謝ってきた。

「すいません、妹です」

 ははーん、なるほどね。

納得してオレはすぐにソファに腰を落とした。


だけど彼女は一向に騒動を終わらせる気配がない。

ただただ、その姿を見つめるしかなかった。