「じゃあ、そろそろ……」

 宴もたけなわ、日が落ちてきたし身体も疲れているためお開きにすることに。

セットや衣装も先ほど片付けて、車に積んでおいたのであとは乗り込むだけだ。


「今日は本当にありがとうございました」

 丁寧に園長が頭を下げ、オレの手を握ってきた。


「遥姫ちゃんをよろしくお願いしますね」

 それは意味深な言葉に聞こえたのは先ほどのことがあったからかもしれないが、なんとか邪念を振り払い握り返す。

「とんでもないです、お役に立てて光栄です」

「萌先生から先ほどお電話もあって、大事にはいたらなかったそうよ」

 園長の言葉に、オレも一安心だ。


「葵さん。一度会社にもどらなくちゃいけないんで、僕はここで」

 そういってペコペコしながら帰り支度をしたオトメくん。

「あらあら、早乙女さんもお忙しい中本当にありがとう」

 園長がオトメくんに近づき、ほんの少し後ずさりをしている姿を見ると、やはりそれはそれで自然の気がして笑ってしまった。

「あ、もうこんな時間だっ」

 もう一人慌しく支度を始めたのは秋さんだった。

「あれ、秋さんも急ぎですか?」

「ごめんね、葵チャン。今日は同伴なのぉ」

 と申し訳なさそうにしなだれかかってくるが、そんなことをしてるヒマはないはずだ。

まだ衣装を身に着けているが、返却は来週なのでまあいいか、と貸し出すことにした。

 意外とよく似合ってるし。


「じゃあ、失礼します」

「またね~」

 二人は忙しい中手伝ってくれ、オレとしても今度御礼しなくては、と考えたときだった。


「あ、ねえ、遥姫ちゃん。さっきあの子が来ていたわ」

 園長が彼女に笑いかける。


 “あの子”……?