おそらくだけど、この台本は都自身にもなぞらえているのだとおもう。そして、彼女についても。


 あの二人には、どこか共通点がある。

例えば、強がって怖い思いを押し殺してみたり、素直になりきれないところがあったり。かと思えば、ヤケに繊細なところもあって。

それを彼女も感じ取ったのかもしれない。


 彼女との付き合いはまだ半年程度のオレが言うのは頼りない言葉なのかもしれないが、手ごたえがあるのも事実だった。



 劇は誕生パーティを終え、ジュリオとロミエットが仲を深めていき、やがて時間を惜しむほど密な関係になる。

そして、例の名シーンだ。


「ああ、ジュリオ、どうしてこんなに会えないのかしら?」

 半ばヤケにもなっていて、なりきるみんなに触発されたのかもしれない。


 秋さんに直された裾は、萌には長すぎてもオレにはいくらか足りない。

そこで歯切れのレースをつなぎ合わせ、どうにか足の露出をある程度まで防げている。

不覚にも、やはり履き心地最悪なストッキングは二度目だ。


「やあ、ロミエット」

 そういって反対の袖から現れた彼女。

キラリと明かりを帯びているからなのか、その瞳はキラキラ輝くように見える。


 本当に楽しそうだった。


「ジュリオ……」

 ……あれ?なんだっけ?

ここで痛恨のミス。 オレがセリフのド忘れ。

冷や汗が吹き出る中、舞台に訪れる静けさに袖で覗く秋さんの表情が険しい。


 こっちは思い出すのに必死だけれども、そうあがけばあがくほど焦る一方だ。